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泣かぬ鼠が身を焦がす

第12章 盲目


車が出て行くのを見送って、大きな門と向き合う


「よし」


意を決して和風な見た目の門と見合わないインターフォンを押すと、女性が応答した


『杉田拓真様ですね。ただいまお迎えに上がりますので、少々お待ち下さい』


カメラ付きのインターフォンで俺の姿を確認したらしく、断定的な表現で一方的に話されて切られる

しかしすぐに門が開いた


「お待たせいたしました。どうぞ」


出てきたのは男性で、声からして昨日電話した秘書の男だろう


「あぁ」


大人しく家に入り、飛び石の置かれた庭を歩いた

少し歩くと玄関がある
そこから入ってさらに歩かされ、漸くある部屋の前で立ち止まった


「こちらで議員がお待ちです」
「……」
「では私はこれで、失礼いたします」


そう言って秘書は下がってしまい、俺は障子貼りの引き戸の前に残される

俺は中に声も掛けずに戸を引いた


「来たか。待っていたよ」


中にいたのは藤本泰造

のみ


「……孫の幹也はどうした?」
「すぐに来るだろう。そう焦らずに、入りなさい」
「失礼する」


少しの違和感を覚えつつ、俺は部屋に入った

床の間の前に座る藤本議員の対面に用意された座布団
そこに俺も腰掛ける

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