
泣かぬ鼠が身を焦がす
第11章 昔離れたあわせもの
暫く何も言わずに、黙っている杉田さん
その様子に、俺の心はじわじわと冷めていった
やっぱり迷惑だったんだ
しかも俺今こんな格好で
ダサ……
すると
「!」
突然、離れていた距離が縮まった
また抱き締められたんだって理解できると同時に、杉田さんが小さな声で呟く
「なら、ずっとここにいろ」
「!」
うそ
なにそれ
俺、杉田さんを好きなままでいいの?
傍にいていいの?
「いい、の……?」
「いいも何も、これでノラは心も身体も俺の物なんだろう? ならずっと傍にいろ」
う、わ
うわぁ……
さっき止まってたはずの涙がまた目から溢れてきて止まらない
「う、ぅぅ……」
「そんなに泣くな。目が溶けるぞ」
溶けるかよって思ったけど、珍しく変な冗談を言われたことに笑いを誘われて涙が少し引っ込む
「俺、杉田さんのもの?」
「あぁ。全部な」
「ぜんぶ……」
ぜんぶ、か
なんかいい響きだな
偶然藤本に会ったことで心にあった不安とか、そういうものが何にもなくなって
ただただ心があったかい
嬉しい
「杉田さん……」
「なんだ?」
「……好き」
「あぁ」
幸せだ
