
泣かぬ鼠が身を焦がす
第11章 昔離れたあわせもの
「無事でよかった……」
「……っ」
急いで運ばれたからか、髪だけじゃなくて服を着てない身体もびちょびちょで
だから抱き締めたりしたら杉田さんの高い服が濡れちゃうのに
「……」
不謹慎だけど嬉しくて
振り解けない
俺、やっぱり杉田さんのこと好き
大好き
俺が汚いとか
そういうの、何にも考えられない
好き
好き
「好き……」
溢れた思いは言葉になって口から零れた
目からは涙が出て止まらない
「ん? 何か言ったか?」
杉田さんの肩に顔を押し付けられてたから、きっと聞こえなかったんだろう
杉田さんが身体を離して聞き返してくる
本当は、ここで誤魔化さなきゃいけない
俺の気持ちは杉田さんに迷惑かけるだけ
でも、初めてのこの気持ちをどうやって抑えたらいいのか俺にはわかんない
「杉田さん……好き」
俺が泣いてるのを見て少し驚いた顔をしていた杉田さんが、俺の言葉でさらに驚いた顔をする
「好きだよ……」
あはは
その顔、ちょっと面白い
「……」
ごめん、迷惑だってわかってる
わかってるけど
ごめん
好き
それ以外何にも考えられない
