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泣かぬ鼠が身を焦がす

第11章 昔離れたあわせもの


長い間無言で抱きしめ合って、漸く気がつく


「裸だったから、身体冷たくなってるな。もう一度風呂に浸かるか」
「あ……ごめん。俺浴槽で寝るなんて……」


そう言うとこつん、と頭を小突かれた


「俺がどれだけ焦ったと思ってる? ここで水死体が上がるのはごめんだぞ」
「うん。ごめん、気をつける」


素直に謝ると杉田さんにふ、と笑われて心臓が跳ねた


な、なんか

前より心臓が素直に反応するから
何気ない仕草で結構ドキドキする

うぐぅ……

でも、まぁ
いっかな

この幸せのまんまでいられるならその方がいい

ヒトミさんが恋は最高の栄養剤だって言ってたことあるけど、ちょっとわかるかも

あーやって言われて
俺すぐ元気になっちゃったもんね


「ほらノラ。早く来い。風邪ひくぞ」
「うん」




でも俺はバカで
この時は気がつかなかった

杉田さんが俺をどう思ってるかを聞いてないことを


受け入れてもらえたことが嬉しくて
これで恋人同士なんだって思ってた

ずっと傍にいられると思ってた


そしてこの時ちゃんと杉田さんから気持ちを聞いていなかったことを後悔するのに
そう時間はかからなかった

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