テキストサイズ

泣かぬ鼠が身を焦がす

第9章 磯の鮑の


ネクタイで手を縛られたままお湯に浸かった俺は、浴槽から杉田さんの様子を伺う


不機嫌……怒ってる……?
いや、なんだろうな

考え事してるのかな


「杉田さん?」
「……」


読んでみても珍しく返事がないから、どうやら本当に考え事してるみたい


仕事のことかなぁ?
つーかさ、それならなんで手出して来たんだよ

今日もヤんのかと思ったじゃん!


昨日の濃厚なセックスのお陰かそこまで俺も溜まってないみたいで、意識してなかった下半身は少しずつおさまってきている


ん、なら別に処理しなくてもいいし
今日はそのまま寝てもらおう


「杉田さん、杉田さん」
「……」
「すーぎーたーさんっ!」
「……ん、なんだ?」


ほんと、今日はなんかぼーっとしてんなぁ


「なんか考え事してるでしょ。さっきから読んでも反応してくれないし」
「あー……悪い。そうだな……」


この歯切れの悪さ
杉田さんって案外わかりやすいよね


「なら今日はヤらない方がいいんじゃない? これ解いて」
「……」
「なに?」
「ノラは、シたくないのか?」


俺?俺は……


「ヤりたくないとかはないけど、杉田さん考え事してるならやめた方がいいかなって思って」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ