
泣かぬ鼠が身を焦がす
第8章 網の目にさえ
顔を逸らすようにベッドに向かうと、後ろから水差しを置いて付いてくる杉田さんの気配がする
う、なんか
これからヤりますって感じが緊張、する
伊藤さんの時はこんなんじゃなかったのに
そう考えて、今日1日中頭の中を支配していた『恋』って単語がまた蘇ってきた
ちがうちがう
恋なんかじゃない
確かに今までにない感じするけど
でも
恋なんて……っ
するとそこまで考えたところで後ろから抱き上げられた
「わ、何……!?」
「考え事をしているみたいだったから放っておいたが、もう限界だ。そろそろ俺のことだけ考えてくれ」
「は? 何言って……っ」
恥ずかしい台詞をつらつら並べて言う杉田さんに抵抗しようかと思ったけど
「……」
「……」
黙って俺をベッドまで運ぶその横顔を見ていたら、なんだか胸が詰まって何を言うことも出来なかった
優しくベッドに下されると、すぐさま口を塞がれる
「ん、ぅ……っ」
俺、キス苦手なのに
ていうか上手く出来な……のにっ
経験の浅さから何もわからないけれど、とろける様な甘い口づけに背中がぞくぞくした
「ふ、ぅん、んぁ……っ、」
