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密ばち

第17章 よぎってしまう記憶

その場には既に修斗の姿はなかった。



手紙を手に取り、読む。





"驚かせてすまんな。あと、朝ごはんを冷蔵庫の余り物で勝手に作ったから、食べろ。"




テーブルには、香ばしい香りが誘うパン、ふわふわ半熟のスクランブルエッグ、チーズとハムと野菜のソテーが皿に綺麗に彩られていた。



「……おいしそう」





弥月は顔を赤くしながら、修斗が作ってくれた朝ごはんを食べた。




こんな些細な気づかいをしてくれるのは、修斗の人のよさだと弥月は思った。



多くは語らない。



ただ、その分人に尽くしてくれるところが彼の長所だ。




そんな彼を改めて意識してしまい、持っていた本を思わず落とす。




(っだめだめ!本探さなきゃ……)




そう頭では思っているが、身体は中々言うことを聞いてくれない。

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