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密ばち

第9章 幼なじみ

弥月には幼少期からずっと仲がよかった幼なじみがいる。



兼藤 恭介(かねふじ きょうすけ)


弥月と同い年である。

短めの黒髪、スッと整った眉毛。キリッとした瞳。

性格的には面倒見のよい人間。
そう感じさせるのは小さい頃から続けてきた野球のおかげかもしれない。



女子、男子ともに人気のある彼だが、彼女はつくったことがない。
モテるのに、女の子が苦手なのだ。




そんな彼が女子の中でも唯一冗談を言えるのが、幼なじみの弥月。




「ただいま~っ!」



「ちょっと!!人の家勝手にあがり込んで『ただいま』はないでしょ!!!」



「ケチだな~!今日も美味い飯食べさせてください!弥月様!」



「……はあ…」


文句を言いながらも料理の準備をする。


恭介の家は弥月と近いこともあり、たま~にこうしてご飯時に転がり込むのだ。


そんな恭介だが、最近の弥月に違和感を覚えている。

キッチンの方へと視線を動かすと、可愛いらしい服に身を包んだ弥月がいる。


「………変わりすぎだろ」

ボソッと呟く。
大学に入ってからの弥月は今までとは比べものにならない。

別に前までの姿でもいいと思う恭介だが。




「焼きそば!できたよー」


「ん!さんきゅー!いただきまーすっ」


「いい食いっぷりだこと…」

半ば呆れ気味に見る。
まぁ一人で食べるよりかはいっかと弥月も食べはじめた。


「ところでさ……」


恭介が話を切りだす。


「なに?まずいとか無しね」


「や、そうじゃなくて」


「?」


「お前、大学入ってから何かあっただろ」


同時に弥月は焼きそばを喉に詰まらせた。


「んぐっ!!!けほっけほっ!!!!」


「わかりやすいなー…お前。お茶、ほら」


「ん…ありがと…」


お茶を飲みほし、落ち着いた弥月は口を開く。


「…………あの、ね…」


隠しても恭介にはバレるため、弥月は正直に今までのことを話した。

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