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桜並木を見おろして【ARS・O】

第11章 マンション【智】

ジーンズのポケットの携帯電話が震えた。

さっきの女からだ。

『今度、ご飯作りにいってあげる。』

メッセージが入っていた。

返信せずに、携帯電話をローテーブルに投げた。

ビールを飲み干すと、風呂に向かった。

頭からシャワーを浴びた。

嫁さんと別れてから、バスタブに湯をはったことがない。

『カラスでももうちょっとゆっくり入るわよ』

嫁さんはいつもそう言ってたほど、俺の風呂は短い。

脱衣室の引き出しからバスタオルを取り出す。

色あせたピンクのシビラのバスタオル。

「バスタオルって、どれぐらい古くなったら買いかえんだろな。」

ひとりごとに答える人は誰もいない。

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