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桜並木を見おろして【ARS・O】

第11章 マンション【智】

何とか終電に滑り込んで帰宅した。

駅から徒歩15分の古いマンションの三階。

鍵を回して重いスチールの扉を開く。

玄関の電気を点けて靴を脱ぐ。

リビングの窓を開けて、こもった熱気を外に逃がす。

ディバッグをソファに投げ出した。

「腹減ったな。」

冷蔵庫を開けるが、めぼしいものは何もない。

俺は缶ビールとチーズを取り出すと、リビングのソファに体を落とした。

テレビのスイッチを入れると、深夜ニュースが危険運転の事故を報じている。

ビールをひとくち飲むと、クッションを枕にしてソファに寝転んだ。

生成の麻に茶色のレースがついたクッション。

別れた嫁さんが選んだクッション。

結婚生活の面影が残るこの2LDKに、俺は暮らしている。

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