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桜並木を見おろして【ARS・O】

第11章 マンション【智】

『え~、そうなの?残念!じゃあさ、智の家に行ってもいい?家にも作品置いてあるんでしょ?』

アトリエの次は家か。

「ごめん、無理だよ。俺、終電の時間だから切るな。」

『えっ、智?ねぇ…。』

女が何か言ってたけど、構わず電話を切った。

明るくていい子なんだけど、一気に距離を詰めてくる感じで。

俺がバツイチで独身だと知ると、とたんにぐいぐい押してきた。

以前の俺なら、流されるまま応じていたのかな。

俺は煙草を灰皿に押し付けると、窓を閉めた。

細い月は、雲に隠れていた。

俺は研究所に鍵をかけ、終電間近の駅へと向かった。

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