
乾いた空
第3章 三章
不思議そうに見ていると
「キリマンジャロも第九も貴方のお父様がこよなく愛されてたんですよ。
ご存知では無いみたいですね。
でも第九はベートーベンだけであって、どの音楽家も第九章までは怖くて作らない。
それは……「第九章まで作ると亡くなってしまうジンクスがあるから…ですよね?」
「ええ、まさに!
お父様もその第九を愛したことでそうなったのか、それともそういう人だったのかは貴方がご存知のはず。
お父様をその手に掛けた時の貴方の表情は今日の空の様に一点の曇りも無く狂喜に満ちて美しかった。
なので、私は貴方と交渉がしたい。」
男はまたはしゃぎながら当分エンドレスで鳴らしていた音楽を止めては僕の隣に座った。
もうすっかり太陽の日は焼けるようなオレンジ色となりインディゴブルーの空の下に堕ちそうになっていた。
