
背中デ愛ヲ、囁キナサイ
第1章 暗闇ノ中デ
胸の奥、にわかに蘇るのは、今、隣にいる彼女に出会う前の自分だった。
――結局、僕にとっての“女の人”は、体以上の繋がりを得られない存在なんだ。
――「好きだ」とか、「愛してる」とか、そんな言葉は体を重ねる為の言い訳だよ。
そんなふうに思ったら、ぼやけた女の人達の中に、今また体をピタリと寄せてきたこの彼女の顔も、混じって浮かんでしまいそうだった。
まだどこかで、彼女を信じたいという気持ちも確かにあった。
でも、その気持ちをあからさまに揺るがすような不安に、結局僕は勝てなくて、
ひとつ、大きな息を吐くと、
僕はオスとして、
彼女をメスとして、
ただの行為に及ぶことにした。
こんなに悲しい気持ちになるなら、今日限り、もう君を恋しいなんて思いたくないんだ。
