
背中デ愛ヲ、囁キナサイ
第1章 暗闇ノ中デ
不安なら「不安だ」と。
嫌なら「嫌だ」と。
それなのに、何も言わずに、ただ、男としての僕の行為を受け入れてしまったあの人にだって、非がなかったとは言えないはずだ。
僕に対する気持ちがないということを、見知らぬ男のキスマークで気付かせるなんて、いくら本気で好きになった相手だとしても、僕には許せなかった。
「アイシテル」なんて嘘まで吐いてさ。
彼女の髪を弄る僕の手はいつの間にか止まり、ただ軽く丸まっていた。
そして、気付けば、
僕のは完全に、何事もなかったかのように軟らかくリセットされてしまっていた。
