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背中デ愛ヲ、囁キナサイ

第1章 暗闇ノ中デ


 僕も何も言わずに、鼻先で彼女の唇を探ったけれど、彼女はそれをやんわりとはね除けるように、僕の胸に顔を押し付けてキスを拒んだ。


 僕を受け入れたくない、
 それが君の気持ち?


 暗闇の中で僕の頭を巡るのは、虚しい思い出の繰り返しだった。

 初めてのあの人と離れてからというもの、僕は女の人を信じることを避けてきた。

 もちろん、体ばかりを求めてしまった自分に非があったことは否めないが、あの人だって、自分の気持ちを僕に伝えるべきだったはずだよ?

 僕みたいな鈍感な男に、言葉なしで気持ちなど伝わるわけがないのだから。

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