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背中デ愛ヲ、囁キナサイ

第1章 暗闇ノ中デ


 その時の虚しい気持ちが蘇る。

 もう、かなりの時が過ぎたというのに。

 今、僕の腕の中にいるこの彼女も、もしかしたら僕の知らない顔で、僕の知らない誰かに、僕の知らないところで抱かれているのかもしれない……

 そんなことが、ふと頭をよぎったと同時に、僕の背中に回されていた彼女の腕が解かれ、僕と彼女の胸の間に入り込み、体と体との間に微妙な距離を作り出した。

 それは、何の意思表示なの?

 僕が抱きしめる腕に力を込めると、何も言わない彼女は体を強張らせた。

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