テキストサイズ

中毒の処方箋 〜淫らな輪舞曲〜

第6章 飽食の時。佳代(3)

山間にひっそりと佇む古い木造旅館「翠月荘」。その重厚な玄関をくぐった瞬間、私と佳代の身体は、すでに内に籠もる熱に浮かされていた。

周囲を包み込むのは、しっとりとした静謐な湯けむり。濃厚な檜の香りが鼻腔をくすぐり、履物を脱いだ素足に触れる石畳の冷たさが、火照った肌へ心地よい刺激となって伝わってくる。

「いらっしゃいませ」

受付の女性が柔らかな笑みを浮かべて鍵を差し出し、離れの客室への道順を簡潔に告げた。私の腕にそっと寄り添う佳代は、どこか控えめな声で「ありがとうございます」と答える。

だが、その声はすでに微かに掠れ、白い頰は薄い朱色に染まっていた。木の香りと、奥から漂う微かな硫黄の匂いが混ざり合い、私の鼻腔を刺激する。

鍵を受け取り、長い渡り廊下へと足を進めた。一歩踏み出すたびに、古い床板が小さくきしむ音を立てる。素足に伝わる畳の柔らかな感触が、心地よく神経を逆なでした。障子を揺らす山風の音に混じり、遠くで湯のせせらぎが絶え間なく響いている。

浴衣に着替える前の、佳代の私服――膝丈のタイトスカートと白いブラウスが、歩を進めるごとに彼女の熟れた腰の曲線と、豊かな胸の揺らめきをいやが上にも強調していた。彼女が纏う香水の甘さと、微かに汗ばんだ肌の匂いが、すぐ後ろから濃密に迫ってくる。

「先生……早く、部屋に……」

後ろから届いた小さな囁き。耳元に触れた吐息の熱さに、私の身体はたちまち抗いがたい疼きを覚えた。

離れの引き戸を開けると、凛とした和室が私たちを迎えた。畳の清々しいイグサの香り、床の間に活けられた季節の生花の甘い匂い、そして障子を透かして差し込む柔らかな午後の光。

部屋の中央に敷かれた大きな布団と、その奥に続く脱衣所の扉が、これから始まる情事を予感させていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ