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中毒の処方箋 〜淫らな輪舞曲〜

第16章 飽食の時。瑞希(2)

その「普通に」という言葉が、私の胸に小さく刺さった。普通ではないことを、彼女は知っている。それでも、彼女は普通を選んでいる。瑞希もまた、同じだった。


瑞希が、調剤室の奥から振り返った。白い肌が、蛍光灯の光に照らされて淡く光る。ウェストの曲線が、ユニフォームの下でわずかに浮かび上がる。彼女は私の目を見て、短く言った。

「先生。私は……どうでもいいから。瑠花を、大事にしてあげてね」

その声は、誰にも聞こえないほど小さかった。しかし、私にははっきりと届いた。瑞希の目は微かに潤んでいた。そして、彼女はすぐに笑顔を作り、瑠花の方を向いた。

「ねえ、瑠花。今日の昼休み、外食しない? 新しいイタリアンのお店が××にできたんだって」

「ええ、そうなの。近いやん。うん、行こ行こ」

二人は並んで立ち、処方箋コピーを手に薬のピッキングを再び始めた。いつもの賑やかな薬局の日常が、そこにあった。患者の呼び込みの声、分包機の作動音、薬を渡すときの「お大事に」の挨拶。その中で、三人の心だけが、静かに、しかし激しく揺れ続けていた。

私はパソコンの画面を見つめながら、深く息を吐いた。
私の中の振り子は、まだ止まらない。

欲望と罪悪感と、ピュアな友情が交錯する、複雑で甘美な日々が、また始まろうとしていた。

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