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中毒の処方箋 〜淫らな輪舞曲〜

第16章 飽食の時。瑞希(2)

夏季休暇が明けた朝、薬局のシャッターはいつもより少し早めに上がった。門前の医院も通常診療を再開し、待合室にはすでに数人の患者が座っていた。

エアコンの効いた店内に、消毒液の匂いと、印刷された薬袋の紙の擦れる音が混じる。いつもの賑やかな日常が、静かに、しかし確実に戻ってきていた。

私はカウンターの奥で、電子薬歴の画面を確認しながら、スタッフたちに声をかけた。

「皆さん、夏休み明けですけど、体調とか大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ、先生」

年配のパート薬剤師・佐藤さんが、いつものように眼鏡を押し上げて答えた。

「ただね、実家帰ったら親に『ちゃんと休み取れよ』ってめちゃくちゃ言われまして。先生こそ、留守番お疲れさまでした」

「いえ。瑞希さんがいてくれたんで助かりました」

私の言葉に、瑞希が調剤室から顔を出した。白いユニフォームの上からでもわかる、Eカップのふくよかな膨らみ。いつものようにボーイッシュな短髪を耳にかけ、明るい声で言った。

「私なんか、先生がほとんどやってくれたようなもんですよ。患者さんもほとんど来なかったし。でも……静かすぎて、逆に疲れちゃいましたね」

瑠花は処方箋を受け取りながら、小さく笑った。帰省から戻って以降、彼女の笑顔は以前と変わらないように見えた。しかし、私にはわかる。その笑顔の奥に、静かな揺らぎがあることを。

「瑠花は実家、どうだった?」

瑞希が、調剤棚の前で薬をピッキングしながら尋ねた。声は明るく、友人として自然なものだった。しかし、その目はわずかに潤んでいた。

私には見えた。瑞希が「私はどうでもいい。瑠花を大事にして」と嗚咽しながら言った夜のことが、彼女の中でまだ生々しく残っているのだと。

「うん、楽しかったよ。お母さんがね、『皆と仲良くやってるの?』って何度も聞いてきて。私、『うん、すごく楽しく仕事してる』って答えたよ」

瑠花の声は穏やかだった。しかし、その言葉の端々に、知っている者にしかわからない慎重さがあった。

彼女はすべてを感づいている。私と瑞希が、彼女の不在の間に身体を重ねていたこと。それでも、友人を第一に考えるピュアな心が、彼女を健気に振る舞わせていた。

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