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中毒の処方箋 〜淫らな輪舞曲〜

第15章 飽食の時。瑞希(1)

瑞希の部屋は診察室の隣にある小さな部屋だった。夕闇が迫る時間、部屋の中には小さな照明だけが灯っていた。薄暗い部屋の中で瑞希は静かに横たわっていた。

麻酔の効いた瑞希は、ベッドの上で目を閉じ、浅い眠りについていた。白いシーツの上で、彼女の顔は普段より幼く見え、額に浮かんだ薄い汗が、淡い光に照らされて光っていた。

私は椅子に座り、ただその横顔を見つめていた。いたたまれない気持ちが、胸の奥でゆっくりと広がっていく。

瑞希は親友を裏切り、私を求め、嘘をつき、その結果として小さな命を宿し、そして消した。私はそのすべてに加担し、何も止めなかった。

瑠花の屈託のない笑顔が、まぶたの裏に浮かぶ。あの笑顔を知っているからこそ、この秘密の重さが、より深く沈んでいく。

「先生……」

小さな声に私は顔を上げると、麻酔から覚めた瑞希が、ぼんやりとした目で私を見た。そして、小さく笑った。

「……ごめんね、先生。私、また先生を困らせちゃった」

「謝らなくていい……瑞希……君は何も悪くない」

「ありがとう。でも、本当にごめん。瑠花にも、この子にも、先生にも。私、最低だよ」

彼女の目から、初めて涙が溢れた。私は何も言わず、ただ彼女の手を握りしめた。冷たくなった指が、徐々に私の体温を受け取っていく。

私たちは女医にお礼の挨拶をすませると、タクシーに乗り込んだ。二人とも何も喋らなかったが、瑞希の手は私の手を握って離さなかった。弱弱しい握りだったが、その手は病院のベッドで感じた冷たいものではなかった。

瑞希の肩を抱きながら、瑞希の住むマンションの部屋へと入った。

「もう大丈夫よ。先生……もう一人で大丈夫」

その言葉を聞いて、私は目の前が霞んでしまった。

「じゃあ……行くよ」

涙を見せないように瑞希に背中を向け、私は瑞希の住むマンションを後にした。


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