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燕尾服は似合わない

第2章 究極




"王子"はカップを静かにソーサーに置き、ゆっくりと口を開いた。

「簡単な話だよ。」

 雪のように白い人差し指で書類を指さす。

「君は退学にならない。
 君を更生させる有効な方法を思いついたんだ。

 君は喧嘩も強い、度胸もある。

 頭は弱いけど、理解力はあるし、どうやったらみんなの気を引けるのか…なんて、そればっか考えてるせいか頭の回転も早いとみた。」

予想外の言葉たちに思わず目を開く。

「まあ、自分よりも強い相手…伊織を前にして怯んだのは誤算だったけど。それは、伊織が躾してくれると思うから……ね。」

 "王子"が視線を向けると、執事はコクリと頷いた。

「何を言ってる…?」

「君のその力を僕が買ってあげるって言ってるんだよ。
 住み込みになるけど…もちろん、報酬はある。
 衣食住もついてくるし…君にとっても悪い話ではないと思うのだけど。」

 "王子"は椅子から立ち上がると、ゆっくりと俺の前まで歩み寄る。

 そっと俺の顎に指をかけ、上を向くように引き寄せた。

「神城 朔真。

 ——今日から君は僕の専属執事になってもらう。」

 
俺はその言葉の意味を完全に理解する前に、無意識に声を荒らげた。


「執事………!?こ、、この俺が!?」

「もちろん、断ってもらっても構わない。
 
 生徒のやりたいことを尊重するのが学園長ってものだ。
 
……まあでも…断った場合…残念だけど、君には違う書類にサインしてもらうことになるけど。」


「つまり…執事になるか…退学するか…選べってこと…?」

 
「そう。」

 "王子"はイタズラをする子供のように、ニコリと楽しげに笑みを浮かべた。

 執事なんて大層なもの、俺に務められるとは思えない。
 品もないし、学もない。
 喧嘩をしている意味さえもわからず拳を握っていた俺が、誰かを守るなんてことが出来るとは思えない。


 だが、ジジイの職を奪った挙句退学になれば、神城家の恥だと勘当されてもおかしくは無い。

 だから、たぶん、やるしか道はない。




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