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燕尾服は似合わない

第2章 究極

俺が起こす問題のたびに、頭を下げていたのはジジイだった。

 どれだけ周囲から責められても、「あいつはまだ変われる」と信じ続けてくれた。

 そんなジジイを、俺は少しずつ追い詰めていたことにも気づかず、この立場に胡座をかいていた。

 俺がすごいわけじゃない。

 守られていただけだ。

 俺を守ってくれていたのは、ジジイだった。

 だから——そのジジイがいなくなった今。

 俺には、何の価値もない。

 
 体から、ふっと力が抜ける。

 
 手首を拘束する金属の手錠が、
 先程よりもずっしりと重く感じられた。
 

「…残念だけれど。」
 

 "王子"の黄金色の瞳がまっすぐと俺を見据える。
 
 
「大半の教師、大勢の生徒が君の退学を望んでいる。
 この学園の平和のために。」
 

 淡々と語られる事実に俺は言葉が出なかった。

「だから君には、この書類にサインしてもらう。」

 ——「退学届け」。
 渡される度、生意気に悪態をつき、
 目の前で破り捨ててきたあの紙だ。
 
 ……馬鹿だった。
 
 好き放題した罰だ。
 これは当然の結末なのだ。

震える指先で書類を受け取り、霞む視界を瞬きで凝らしながら内容に目を通す。

 そこには——
 

「………ぎょ…ぎょうゆだたく…けいやくしょ…?」
 

「おお!おしい!それは業務委託契約書だね。」

 
「……は。」

 先程までの雰囲気とは一変。
 困惑する俺を見て、"王子"と執事が愉快に肩を揺らした。

「た、退学届けは…?」

 
「そんなもの、ないよ。
 
 例え僕以外の全員が君の退学を望んでも、
 
 僕が判を押さない限り君は退学にはならない。」

 
 
「じゃ、じゃあ…なんで俺をここに連れてきた。」

理解が追いつかない。
 説教でも無ければ、退学でもない。
ならばなぜ俺を拘束してまでここに連れてきたのか。

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