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第7弾『薔薇と百合の奇跡』

第2章 『百合の館LILY』

 3

「ねぇ…」

「はい?」

「わたしが…来ると…思ったの?」

「え…あ……い、いや………」
 わたしは、首を振る。

「嘘……」

「え、嘘じゃないです…」

 わたしは、こうした性癖嗜好を自覚して以来…
 恋の成就がしたことがない。

 いや、自分からは、打ち明け、告白をしたことがなかったし…
 その想い自体が、コンプレックスでもあった。

 だが、成長と共に、性欲だけは増してきて…

 しかし、男性には、どうしても嫌悪感が湧いてしまい、手を触れられるのも…
 駄目であったのだ。

 だから、こうした出会いバーで、発散するしか他に無かった――

 それに、なぜか…
 カラダだけの相手にしか恵まれず…
 心の虚無感だけが、広がるばかり。

 そんな時、この悠里課長に出会い…
 一目惚れをしてしまったのである――

「なぁんだぁ…
 じゃあ、来て損しちゃったなぁ…」

「えっ」

「ふぅぅ、帰ろうかなぁ」
 悠里課長は、そうため息を漏らし、立ち上がる。

「えっ、あっ、そ、そんなっ」

 わたしは、無意識に…
 いや、必死な思いで、悠里課長の手を握った。

 駄目っ…

「イヤっ」

 帰らせない…

「か、帰らないでっ、す、好きなんです」
 わたしは、必死に手を握り、引き留める。

「え…」

「す、好きなんです」

「……」

 その時…
 握り締めていた手が… 
 ギュッと、握り返された。

「………」
 そして、悠里課長が…
 ジッと、逸れずにわたしを見つめてくる。

「く、来ると思ってなかったんでしょう?」

「あ、いや、来て…」

「………」

「き、来て、ほしかったから…」

「わ、わたしはね…」

「え…」

「すぐに、アナタ、美玖ちゃんだって、わかったわ…」

「あ…」

「それに…ね…」

「………」

「う、嬉し…かったの……よ……」

「え…」

 悠里課長の握る手に力がこもり、しっとりと湿めり…

「嬉しかった…の…よ………」

 目が逸れ…
 恥ずかしそうに、下を向く。

 あの『鉄の女』が…

 揺らいで、見えた――


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