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第7弾『薔薇と百合の奇跡』

第1章 『薔薇の館 Rose』

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「いらっしゃいま、あ…」
 ボクは、お店に入ってきたお客様の顔を見て、思わず絶句してしまう…

「あ、じ、純、山口か…」

「もっ、あ、茂木…せ、先生…」

 そう、彼は『茂木和弘』、ボクの高校時代の先生…
 茂木先生…通称『もっちゃん』だ。

「あ…」

「う、こ、こんな所で…なぁ…」

「は、はい…お久しぶりです…」

 こんな所で…
 ここは、新宿二丁目、通称『ゲイの街』
 そしてこの店の名前は『薔薇の館 Rose』
 男同士の出会いを求める者たちが集まるバーである。

 ここでお客様は、店員スタッフであるオトコの子、もしくはお客様同士が、気に入り、話を交わし、そして…
 ネオンの中に連れ出せるお店――

 お久しぶり…
 高校卒業以来だから…
「じ、純は確か、大学三年か?」
「あ、はい、そうです…」
 高校二年の時の英語教師、そして言葉を交わすのは約四年振り――

「そ、そうかぁ…」

「は、はい…」
 一瞬、いや、かなり気まずい空気が流れるのだが…

「あ、そ、そういえば、もっちゃん、あ、先生…」

「ん、もっちゃんでいいよ」

「あ、いや…
 そういえば先生、よくボクの事を覚えてましたね?」

「え…あ、そ、それは教師だし…」

 いや、ボクは当時からホモセクシャルに目覚めてはいたのだが…
 気持ちも小さく、こうした世界をまだよく知らなかったし…
 イジメられるのを出来るだけ避けたいから、常に大人しく、なるべく目立たない様に、ひっそりと高校生活を送っていた。

 そんな中で、このもっちゃん先生は…
 常に優しそうな笑みを浮かべ…
 そして柔軟剤であろうか、微かに甘いローズの香りを漂わせ…
 正にボクの、ドンピシャなタイプのオトコであったのだ。

 だが、ただ、遠くから見つめているだけ…
 多分、直接的な会話は…
 交わした記憶さえ、ない――

 成績も平凡、部活にも入らず。
 教室の隅で息を潜めるように過ごしていたボクを…
 ……そんなもっちゃん先生が、ボクを、しかも、フルネームまで覚えてくれていた……

 それは、まるで、奇跡に思えた――

「…なんか、嬉しい……」



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