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背中のチャックが閉められない

第1章 背中のチャックが閉められない…

 2

 一人でも平気だと、軽く思っていた――

 仕事もある… 
 友達もいる…  
 休日だって、それなりに楽しく過ごせる。

 でも、こういう時間だけは駄目だった…

 コンビニの新作スイーツを半分別けにするとか…
 眠る前の、他愛ない話をするとか…
 そして…
 届かない、背中のチャックを閉めてもらうとか。

 そんな小さなことが、急に胸へ刺さる――

「ふぅぅ…」

 静かな部屋が…
 わたしを、途方の闇へと引いてくる。

 こんな時…
 他の皆は、どうしているのだろう?

「………」
 ふと、マンションの外を見る。

 都会の、密集する住宅街…
 処狭しと建ち並ぶ、マンション、大小の住宅。

 その窓のひとつ、一つに生活がある…
 なぜか、わたしだけが、孤独にひとりの様な、錯覚に陥ってしまう…

 この部屋の静けさが、重い――

 空の明るさが、やけに眩しい――

 ブ、ブ、ブ……
 スマホが、震えた。

「あ」
 スマホを手に取り、画面を見て…
 わたしは息を止めた。

 彼からのLINE――

『今日、結婚式だっけ?』
 わたしがアゲたスタンプ…

 ブ、ブ…
 続くLINE。

『ちゃんと行けそう?』

「………」
 数秒、画面を見つめ…
 わたしは思わず、小さく笑ってしまう。

 本当にずるい…
 どうして、こういう時だけ連絡してくるんだろう。

 わたしはスマホを置き…
 もう一度、背中へ手を回す。

 やっぱり、指が届かない――

「……もう」
 泣きたいのか、笑いたいのか、自分でも分からなかった…

 少し迷ってから、スマホを手にし、返信する…

『チャックが閉まらない』
 
 すぐに、既読がつく…

『行く』

 その二文字を見た瞬間…
 わたしは鏡の前で、ひどく情けない顔のまま…

 その顔は、泣き笑い――
 
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