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SAKURA (さくら)

第4章 ソメイヨシノ 3 統括部長

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「本部長、おはようございます」

「おはよう、あ、そうだ、美卯くんを呼んでくれ」

「はい」
 今度は、色々な意味を含めて、敢えて、男性秘書にした…

 そう、波風を立たせず…

 無駄に敵を増やさない為に――

「おはようございます、お呼びですか」

 そして、この、美卯の為にも――

「準備は整っているのかな?」

「はい…万全です」

「そうか、じゃあ、行くか」

「はい」

「うむ…」
 彼女の企画を推し進め、同行営業に行く。

 だが…
 それだけではなかった――

 正に今の、この、春爛漫という季節のせいなのだろうか…

 この美卯と一緒にいると…

 そう、まるで、春風が吹いているかのように…

 心の中が、穏やかに、軽やかに、爽やかになってくるのだ。

「………」

「え、何か…」

「あ、いや…」
 タクシーの中で、私は、つい、彼女の横顔を見つめてしまう。

「なんか、緊張します」

「そうか、大丈夫、心配ないよ…」

 そして、心が、揺らぐ…

「そ、そうですよね」

「あぁ、大丈夫さ」

「……ですよねぇ」

 その時、気付いた…

 いや、記憶がよみがえった。

「あ、ネクタイ…してくれてる……」

 そう呟き、触れてくる…

「……」

 まだ、弥生と付き合う前…

 こうして、大口の取り引き先に、一緒に同行営業をした、という昔――
 
「大丈夫、心配いらんよ…」
 ネクタイに、触れてきた指に、重ねていく。

「……そ、そうですよね…」

「ああ、一緒なんだから…」

「そうですよね、ほ、本部長が一緒に同行してくださってるんですものね…」

「………」

『弥生くん、心配いらないよ、私が一緒なんだから…』

『そうですよね、部長がご一緒してくださるんですものね…』

 よみがえる、あの時の会話…

 そして、付き合うきっかけ――


「え…」

「……」

 重ねる指先を、絡めていき…

「……」

 そうか…

 春風は、彼女なのか――

 私は、タクシーの車窓から…

 満開を過ぎ、風に舞う…

 ソメイヨシノを、目で追う――

「あぁ、きれいだわ…
 まるで…桜吹雪みたい……」

「………」

 そして、この淡い…

『サクラ』の香りにも…

 心が、和んでいく。

 
 

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