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SAKURA (さくら)

第8章 五月 皐月めい

 5

 わたしは、専務の前で小さく座っている彼の姿を、見下ろして…

 権力は…

 甘くて、快感なのだと、初めて知った。

「さぁ、本部長サマ、コーヒーどうぞ」
 
 わたしは、彼の前に置く…

「………」

「え、と…
 ブラックでよろしかったんでしたよね…」

「あ…う、うん…」

 彼は、頷いた…

 それは、正に、苦虫を噛み潰したような、歪んだ表情と、声音――

「お、そうだっか…」

「………」

「めいくんは、この前までは、彼の元にいたんだっけか…なぁ…」

「はい、そうです…
 以前、本部長サマには、すごく良くして頂きました」

「うん、そうかぁ」

「………」

 そして、すべてを見透かしたかの様な、その専務からの…

「めいくんの、この優秀さは、キミ仕込みなんだなぁ…」

 ダメ押しの、この言葉――

「あ……」

 そして、すべてを悟った彼の…

 絶望的な、声音――

「そんな、優秀だなんてぇ…」

 わたしは、心の奥底から…
 
 愉悦の快感に、震えていた――

「いや、めいくんは、本当に…優秀だよ…」

 専務の、そんな、昂ぶる声音…

「………」

 彼は、堪えきれずに、下を向く。

 権力は、まるで甘い蜜のよう…

 わたしの心が、快感に疼く―――


 さて…

 わたしは、これから…

 どうしていこうか―――



 季節は、春が終わり…

 花(さくら)が、散り…

 新緑が芽吹き始める、五月の初夏…

 五月、皐月…

 わたしの、季節―――

 


 八重が散り
 終わりと思う
 皐月風
 消えぬ想いの
 春が疼けり

      
     SAKURA(さくら)  

         完


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