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SAKURA (さくら)

第4章 ソメイヨシノ 3 統括部長

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「統括部長ぉっ、いよいよ、本部長昇進が、決まったんですかぁ?」

 私が午前中に専務に呼ばれ、戻ってきた時に…
 秘書の皐月めいが、そう言ってきた。

「あ……う、うん」

「うわぁ、おめでとうございます」

「まだ、内示だけどな…」

「え、でも…」

「あ、あぁ…」

「あ、本部長になっても、わたしを連れてってくださいね」

「……あぁ……うん………」

 近い…
 
 声も、距離も。

 そして…
 
 この、香りも。

「………」

 甘い、シャネル…

 以前は、それが心地よかった――

 昇進のたびに、濃くなるその香りが…
 
 まるで、自分の価値を肯定してくれているようで。

「………」

 だが、今は違う…

 同じはずの香りが、どこか重く…

 まとわりつくように、離れない。

「………」

 その重さが増すにつれ…

 家での会話が、減っていった。

 そして、いつの間にかに…

 目を合わせる時間も、減ってきた――


「………」

 いつからだろう…

「………」
 
 あれは…

 弥生が主任時代に、抜群の、営業数字を叩き出していた頃…

 その勢いに乗るように、自分も、上へと引き上げられていった。

 成果は、連なり、評価も、連なり…

 私の中で、野心という焔が生まれた――

「………」

 気づけば、その延長線に、今がある。

「………」

 けれど…

 そのどこかで、何かを、置いてきた。

「………」
 
 そして、めいの香りが、強くなってきた。
 
 それは近づいたのか…

 それとも、自分のほうが、敏感になったのか。

「………」
 
 甘いはずなのに、鼻につき…

 残り、消えない。

「………」

 そんな頃…

 目にしたのが、美卯の企画書。

 そして、彼女から感じた…

 爽やかな、サクラの香りに魅かれ…

「………」

 比べてしまった―――

 

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