テキストサイズ

蜜会…春の嵐

第1章 春の嵐

 1

「きゃぁ、美春ぅ、久しぶりぃ…」
「あぁ、みっちぃ…」
 そんな嬌声や再会の歓声が、この同窓会の会場のあちこちで上がり、聞こえてくる。

 そう、今夜は、成人式以来の20年ぶりの同窓会…
 
「みっちぃ元気なの?」

「うん、美春こそぉ」
 そう明るく応えてくるみっちぃ、美千代は、中学、高校時代からの親友…
 だが、わたしの大学進学に伴う上京と、そのまま地元に就職したという進路により、すっかりと疎遠になってしまったのであった。
 
 あの頃は…
 地元組、上京組、学生、社会人と別れ… 
 その枠組みにより、各々、ひとつの人生の別れの岐路といえたのだと思う。

 また、仕事や結婚や、経済的な違いにもより、それぞれ様々に、隠れた事情を抱え、この同窓会に参加しているのであろうとも思われる。

 人、様々な隠れた事情…
 それは、この同窓会の約三割という参加率に表れていると思うのだ。

 誰しもが…
 あの昔の夢見ていた通りに、簡単に人生を送れているはずもなく…
 なんとなくではあるが…
 可もなく不可もないか、自慢できる生き方を送っている同窓生たちが、今夜、こうして参加しているのだと思われる。
 
 そんなわたしも、決して自慢できる程のこの20年間ではないけれど、別に隠す程でもなく…
 望郷の思いの強さにより参加したのであり、こうして懐かしい面々との再会に一喜一憂してしまうのである。

「あ、ねぇ、そうだ…」

 そして、こんな美千代の言葉により、わたしの心の中に…

「今日、田中も来るってよ」

 その名前を聞いた瞬間…
 わたしの心に、小さな風が吹きはじめてきた。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ