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アシスタントで来ただけなのに…!

第1章 鬼才漫画家、市川ルイ



屋敷を囲む鉄柵。


目の前には大きな鉄柵の門がある。


キィッキィっと風に揺られて音を立てている。


ズルりと鞄が肩から落ちた。


さっきの明るい森とは違い、日もあまり当たらない薄暗い場所だ。



「な、に…ここ…え?本当にここ…?」



何度も地図を確認した。


そして震える手でスマホでも地図を見た。


ここだ。ここであってる。


でもスマホのマップでは周りに建物もあるし、全然違う…。



「もしかして、更新されてないとか…?」



その時風が吹いた。


ぶるっと体が震える。


なんだ、この冷たい風。


それに頭もすごく痛い。



「やばい、ここ、やばいとこだ…帰らなきゃ…」



母に連絡して、すぐさま元の道に引き返そうとしたが、


ふと屋敷の窓に誰かが居た気がした。



「え?待って、今の市川先生…?」



ちゃんと見てなかったから分からないが、中に誰かいる。



「た、確かめなきゃ…」



何故だか分からないが、私は足を進めた。


あの誰かが市川ルイかもしれないということを期待したのだ。


引き寄せられるように私は冷たい門をゆっくり開けて、敷地内に足を踏み入れる。


その瞬間、言葉に出来ない何かに覆われた気がした。



「っう…寒い…」



さっきまでの暖かさとの温度差がある。


あまりにも冷たい、寒気が止まらない。



「うぅ…頭痛い…」



その場に崩れそうになりながら、屋敷の窓を見るとやはり誰かの気配がする。



「市川…先生ですよね…行きます…」



重たい足取りで一歩ずつ進み、屋敷の分厚い扉の前まで来た。



外観、植物のツタが絡まった屋敷だが扉は上品で綺麗だった。



年季のある建物だからか、インターホンが見当たらない。



私は三回ノックをしたが、音が小さかったのか誰も出てくる気配がしなかった。




「あのー、すみませーん!」



大きめの声で呼びかけてみたが誰も出てこない。



「入ってから、挨拶したほうがいいのかな」



きっと誰かが出迎えてくれるかもしれない。



私はそっと、扉を開けて屋敷の中を確認した。



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