自殺紳士
第19章 Vol.19:時が降る
☆☆☆
『彼』が初めて私のところに来たのは、
ちょうど1年前の明日。
つまり、29歳の誕生日のその日だった。
いつも通り仕事をして、
いつも通り家に帰る途中、
やにわに曲がり角から姿を現した男がいた。
黒いスーツに、濃紺のネクタイを身に着けた男。
そいつが私に向かって
『あなた死ぬつもりですよね?』
と言った時は、心臓が飛び出るほどびっくりした。
確かに、その日、私は明確に自分の死を意識した。
『ああ、これで私の人生もあと1年で終わるんだ』
と思いながら空を見上げていた。
時は無情に過ぎ去る。
留まってほしいと思っても、過ぎていく。
それを恨んでも仕方がない、
そう思ったところだった。
この不思議な男は、
なぜか私がそう考えていることを知っていて、
私に向かって、
『話をしませんか?』
『死にたい理由があるなら、なんとかできるかもしれないし』
なんて言ってきた。
宗教の勧誘かなんかだと思って、
最初は無視していたけれども、
それから、何日かに一度、
彼は私の前に現れては
『えっと・・・良ければお話を・・・』
『ほら、なんとかなるかもしれないし・・・』
としつこく食い下がってきた。
そしてある時、私は、
不思議なことに気づいたのだ。
私はこの人のことを覚えているのに、
私以外の人は、この人のことを
数分後にはすっかり忘れてしまうのである。
それについて、『彼』は、
『死にたいわけじゃない人は、
僕のことを覚えておけないんです』
と説明した。
そんなところから、
『彼』と少しずつ話すようになってきた。
『彼』は言った。
自分は自殺をしたこと。
その結果、神様から罰を受けているところだということ。
食べることも寝ることも必要ではないこと。
死にたい人以外は自分のことを覚えておけないこと。
そして、
ずっと、年を取ることがないこと。
「いいな・・・」
その話を聞いた時、ポツリと私は呟いた。
『彼』の話は荒唐無稽で、眉唾だけど、
もしも、本当に『年を取らない』なら、それは羨ましいことだった。
でも、私の言葉を聞いたときの『彼』は、
なんだか少し、悲しそうな顔をしていた。
『彼』が初めて私のところに来たのは、
ちょうど1年前の明日。
つまり、29歳の誕生日のその日だった。
いつも通り仕事をして、
いつも通り家に帰る途中、
やにわに曲がり角から姿を現した男がいた。
黒いスーツに、濃紺のネクタイを身に着けた男。
そいつが私に向かって
『あなた死ぬつもりですよね?』
と言った時は、心臓が飛び出るほどびっくりした。
確かに、その日、私は明確に自分の死を意識した。
『ああ、これで私の人生もあと1年で終わるんだ』
と思いながら空を見上げていた。
時は無情に過ぎ去る。
留まってほしいと思っても、過ぎていく。
それを恨んでも仕方がない、
そう思ったところだった。
この不思議な男は、
なぜか私がそう考えていることを知っていて、
私に向かって、
『話をしませんか?』
『死にたい理由があるなら、なんとかできるかもしれないし』
なんて言ってきた。
宗教の勧誘かなんかだと思って、
最初は無視していたけれども、
それから、何日かに一度、
彼は私の前に現れては
『えっと・・・良ければお話を・・・』
『ほら、なんとかなるかもしれないし・・・』
としつこく食い下がってきた。
そしてある時、私は、
不思議なことに気づいたのだ。
私はこの人のことを覚えているのに、
私以外の人は、この人のことを
数分後にはすっかり忘れてしまうのである。
それについて、『彼』は、
『死にたいわけじゃない人は、
僕のことを覚えておけないんです』
と説明した。
そんなところから、
『彼』と少しずつ話すようになってきた。
『彼』は言った。
自分は自殺をしたこと。
その結果、神様から罰を受けているところだということ。
食べることも寝ることも必要ではないこと。
死にたい人以外は自分のことを覚えておけないこと。
そして、
ずっと、年を取ることがないこと。
「いいな・・・」
その話を聞いた時、ポツリと私は呟いた。
『彼』の話は荒唐無稽で、眉唾だけど、
もしも、本当に『年を取らない』なら、それは羨ましいことだった。
でも、私の言葉を聞いたときの『彼』は、
なんだか少し、悲しそうな顔をしていた。
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