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自殺紳士

第19章 Vol.19:時が降る

【時が降る】

「葉子は将来、何になるの?」

夕焼けに染まる校舎。
いつまでも終わらないおしゃべり。

相手は私の無二の親友・・・真奈美だった。

「うん・・・
 特に決めてないや。
 モデルとか?」
「えぇ!!そうなの!?」

真奈美はニコッと微笑んで、
『確かに葉子ならいけるかも』なんて言ってくれる。

でも、私自身は、そんなの無理だと思っている。
特にプロダクションに入ったりしてるわけではないので、
そんな夢はいかにも非現実的なおままごとだ。

将来については、正直に言えば考えていない・・・
いや、『考えない』という方が正解だった。

「真奈美は?」
「私は・・・看護師かな?」

真奈美は優しい。
クラスでは保健係をしていて、男子からはよく『癒し系』と言われている。
誰に対してもきつく当たることなく、笑顔が可愛らしい。

将来、白衣を着て、患者さんの手当をしている真奈美を想像するのは
とても容易かった。

このあと、どうしてそういう話になったのかよく覚えていないけれども、
真奈美が『あたしさ、可愛いおばあちゃんになりたいんだよね』と言ったのを覚えている。

ゾクッと背中が粟立つ。
それは、自分でも名状しがたい感情だった。

「私は嫌っ!」
「え?」

思ったより大きな声が出てしまった。
真奈美がびっくりしたようにこちらを見た。

「年なんか取りたくない」
「え・・・でも、それはしょうがないことじゃ・・・」

この後、どんな話をしたのかは覚えていない。
多分、先生が見回りに来たかなんかしたのだろうと思う。
その話は何となくそこで流れてしまった。

でももし、話が続いていたら、
私はこう言っていたかもしれない。

『私、29歳で死ぬから』・・・と。

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