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自殺紳士

第18章 Vol.18:昏い家

男性がパン、と声を上げた。

母はびっくりしたように目を丸くした。
私も驚いていた。
それほどの声だった。

男性は、母をまっすぐに見つめていた。
そこには強い、強い光が灯っていた。

「目の前の智花さんは苦しんでいる
 生きるのに理由が必要なほど
 苦しんでるんだ
 子供が苦しんでるのに
 それを見ようとしない親が正しいわけあるか!!」

な・・・っ

あまりの剣幕に、呆気にとられたのかもしれない
母は言葉を失ったように黙ってしまった。

「もう・・・いいよ、お兄さん」

私が口を開く。
見ていられなかったからだ。

「お母さん、行くよ、私」
母の手を取って、その場を離れるために。

だって、これ以上続けたら、きっと母はあなたを傷つけるから・・・。

「智花さん!」

男性が、私の名を呼ぶ。
振り返ると、彼は、涙を流していた。

その目は、怒りとも、悔しさとも、悲しみともつかない
深い色を湛えていた。

そして、それ以上、男性は何も言わなかった。

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