自殺紳士
第18章 Vol.18:昏い家
【昏い家】
その日、私はいつも以上におかしかった。
そもそも頭がいっぱいだったのだ。
道を歩く。
確かに歩いている。私は歩いている。
でも、歩いているのは私ではない。
どっちに行く?
前に進むのか、後ろに下がるのか
右に曲がるのか
左に真っ直ぐ進むのか
何かを選ぶことが怖くてたまらない
何かを選ぼうとすれば、またあれが来る
あれが来るから・・・
でも、歩かなきゃ・・・
とにかく行かなきゃと歩みを進めようとした時、
ぎゅっと私は誰かに手首を掴まれ、そこでやっとハッと気付いた。
目の前をものすごいスピードでトラックが通り過ぎる。
音が蘇る。
交差点に行き交う車の音
道行く人の足音や笑い声
その中で、私は
自分が、赤信号の交差点に
足を踏み入れようとしていたことに気づいた。
「危ない・・・よ?」
私の手を握っていたのは、
黒いスーツに黒いネクタイ。
いや、ネクタイはどうやらかろうじて黒ではない
そんな格好をした若い男性だった。
「すみません」
私が少し力を入れると、その男性は私の手を離してくれた
足早にその場を立ち去ろうとした私に、
男性は後ろから呼びかけた。
「あの!」
振り返ると男性はどうしたわけか困ったように目を泳がせ、
数秒後にこう言った。
「あの、良ければ道を教えてくれませんか?」
「はあ・・・」
男性が行きたいと言ったのは、その場所からほど近いJRの駅だった。
道は、すぐに教えることができた。
「じゃあ、これで」
立ち去ろうとする私に、男性がなおも声をかけてくる。
「あなたは、道に迷ってないんですか?」
一瞬、言われていることの意味がわからなかった。
私が硬直していると、男性は、人差し指で頬をかき、
やっぱり困ったような顔をして、奇妙な話をし始めた。
その日、私はいつも以上におかしかった。
そもそも頭がいっぱいだったのだ。
道を歩く。
確かに歩いている。私は歩いている。
でも、歩いているのは私ではない。
どっちに行く?
前に進むのか、後ろに下がるのか
右に曲がるのか
左に真っ直ぐ進むのか
何かを選ぶことが怖くてたまらない
何かを選ぼうとすれば、またあれが来る
あれが来るから・・・
でも、歩かなきゃ・・・
とにかく行かなきゃと歩みを進めようとした時、
ぎゅっと私は誰かに手首を掴まれ、そこでやっとハッと気付いた。
目の前をものすごいスピードでトラックが通り過ぎる。
音が蘇る。
交差点に行き交う車の音
道行く人の足音や笑い声
その中で、私は
自分が、赤信号の交差点に
足を踏み入れようとしていたことに気づいた。
「危ない・・・よ?」
私の手を握っていたのは、
黒いスーツに黒いネクタイ。
いや、ネクタイはどうやらかろうじて黒ではない
そんな格好をした若い男性だった。
「すみません」
私が少し力を入れると、その男性は私の手を離してくれた
足早にその場を立ち去ろうとした私に、
男性は後ろから呼びかけた。
「あの!」
振り返ると男性はどうしたわけか困ったように目を泳がせ、
数秒後にこう言った。
「あの、良ければ道を教えてくれませんか?」
「はあ・・・」
男性が行きたいと言ったのは、その場所からほど近いJRの駅だった。
道は、すぐに教えることができた。
「じゃあ、これで」
立ち去ろうとする私に、男性がなおも声をかけてくる。
「あなたは、道に迷ってないんですか?」
一瞬、言われていることの意味がわからなかった。
私が硬直していると、男性は、人差し指で頬をかき、
やっぱり困ったような顔をして、奇妙な話をし始めた。
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