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幸せな報復

第22章 沢子と山口宗男

 彼は怪物と言われても、所せん、彼は現代科学が生んだ生物だ。科学者によって作られた即席の怪物だ。

「数万年の歴史を経て進化してきたけだもの族とは何だ」

 この自分の力にけだもの族の力を合わせれば世界を支配することを加速できる。そのためにも沢子はけだもの族の橋渡しとし利用たい、と目論んでいた。

「沢子を利用してけだもの族を自分に従わせよう。奴らだって数万年も人間から隠れて生きてきたんだ。日の目を見たいだろう」
 彼の野心はけだもの族を従属させることで更に大きく膨らむ。世界の代表者が彼の前でひれ伏す姿を想像した。
 
「世界がこの俺のものになる…」

  *

 沢子は出産後の回復が遅れていた。二人を生むことは強靭な体であっても負担だった。彼女は布団の上に横たわっていた。彼女の横に生まれたばかりの赤子が二人並んで眠っていた。
 障子を開けて部屋にやってきた海星に沢子が気付くと、上半身を起こした。

 仁王立ちする海星は沢子と赤ん坊を見下ろしながら言った。

「生まれるはずのない子… つまり、邪悪な子は殺さなければならない」

 その低く落ち着き払った海星の言葉に沢子は耳を疑った。

「あなたは自分の子が欲しくて毎日、わたしを抱いていたのでしょ、なんでそんなことを命令できるの? 人でなし!」
「ははは、今さら何を言う。毎晩お前は人でなしの俺を喜びながら受け入れていたじゃないか」
 沢子は両耳を両手で覆いながら大きな声を出した。
「そんな話、しないで!」
「ふん、とにかく二番目の子は殺すんだ!」

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