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幸せな報復

第22章 沢子と山口宗男

 彼は、その見届け役として部下の山口宗男に命じた。山口宗男という男は、海星が幽閉した沢子に食事を与える世話役をさせていた男だ。
 毎日、3回、沢子の食事を宗男に用意させていた。何の取り柄もない男だが、海星に対する忠誠心は強かった。
「何でも海星様のためならいたします」
 単純で疑うことを知らない男だった。
「牢に閉じ込めている女、どう思う?」
「…」
「きれいな女だろ? 抱きたいか? 俺の妻だがよく働くお前なら抱かしてやってもいいぞ… そのためにはお前をほれさせろ! いいか、抱いてください、と言わせるんだ」

 彼は宗男を沢子に関心を向けさせるために言った。朴訥としてるだけで女に縁のない宗男は海星に抱くことを許された沢子に興味を持った。

 沢子は幽閉中も日常的に丸裸にされていた。海星が彼女の美しい裸体を見たい、という思いもあったが、邸宅から逃亡することを防ぐためでもあった。
 暗がりの中で盗み見する宗男には沢子の裸身は白く輝いて美しかった。

 宗男は毎日三度、沢子のもとへ食事を運んでいた。
 最初は海星の命令だから従っていただけだった。
 だが沢子は、どれほど不自由な生活を強いられていても、食事を運ぶ宗男に必ず礼を言った。

「ありがとう」

 その一言を聞くたび、宗男は胸の奥がむずがゆくなった。
 自分のような男に、あれほど美しい女性が頭を下げる。
 それだけで嬉しかった。

 やがて宗男は、沢子のことを考える時間が少しずつ増えていった。やがて、宗男は沢子のことばかり考えるようになっていた。


「海星様… ぜひ、奥様を抱かしてください」

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