
Restart
第4章 偏愛
泣きながらそう言った。
「今、俺がここに来てる事をチエは知りません。…だから、会うって言うかどうかも分かりません」
増山「…フゥ……はぃ」
「昌也さんが居ないのは昼間ですよね?」
増山「でも、時々…1日中家に居る日もあります」
「昌也さんが居ても出掛ける事は可能ですか?」
増山「えぇ。それは。…買い物に出掛けるのは私一人ですから」
どうにか彼抜きで会える様にすると話し、チエの思いを優先するからもし嫌だと言えば諦めてくれとも伝えた。
念の為、お袋さんの番号を聞いておいた。
「…万が一があるので、俺の番号は言いません。…知らない番号は俺ですから、適当に友人とのフリしてください」
増山「あのっ…そんなに、昌也は……昌也はチエをどうしたいんで、しょう」
「分かりません俺には。…ただ、チエが執拗に怯えてる。…恐らく、自分の物にしようとしてると…俺の勝手な想像ですが」
血が繋がってない事を、チエが知ったのは高校に入ってからと教えた。
昌也さんはその前…いや、初めから知ってた。
だからチエが小さい頃に悪戯を仕掛けた。
6個上らしいチエの兄貴。
もう好きな女くらい出来ても不思議ではない年頃だ。
増山「あの…どうか…チエを…あの子を守ってやって、くださいっ」
頭を下げたお袋さん。
はらりと髪が揺れて、うなじが露になる。
濃い、青紫の痣。
「…昌也さんは…貴女にも、手を?」
増山「…」
「お袋さん」
増山「チエが……帰って来ない、のは…私の、所為、だと…」
チームに居た頃は、仲間思いの優しい兄貴の様な存在だった昌也さんは、裏じゃとんでもねぇクソ野郎だったと知る。
一時間も居なかったと思う。
外に出れば侑が運転席から降りドアを開けた。
立ってれば目立つから。
「…どのくらい居た?」
侑「50分程でしょうか」
「急いで帰るぞ」
侑「はい♪」
また、泣いてるかもしれない。
いや…
ショウが一緒なんだ、大丈夫だろう。
俺以外の前で涙を流す事は、余程の事がなきゃないから。
溜まり場に戻り玄関前で、ドアの外まで聞こえてくる騒がしい声。
ドアを開ければ、泣き叫ぶチエの声を耳にした。
「…チエ」
知恵「チカァ!…フゥ……ック…ゥゥ…」
飛び付いたチエを抱き締め背中を擦る。
俺が帰らない事で、ショウに連れていけと暴れたらしい。

作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える