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第4章 偏愛


見上げたチエは、優しく微笑んでキスをする。

出会った頃からは想像もつかねぇ程、綺麗に優し気に微笑んでた。

智翔「………知ってたんだ。お前の事」

「…ん?」

智翔「あの日。歩道橋で落ちようとしてた日。…俺はもう、お前の事、知ってた」

「…」

俺の頭を包み込む様に抱き締めてたチエ。
ピクッと、ほんの僅かに震わせる。

気持ち悪ぃ、よな。


初めてチエを見掛けたのは、やっぱ歩道橋の上。

その頃までは、ショウが煩ぇから学校も行ってた。
通学に通ってた歩道橋の上で、制服を着た女が、ボーッと下の道路を眺めてるのを見掛けた。

肩に触れるか触れないかくらいの髪が、風でサラサラ揺れてて。
恐らく校則通りの丈のスカートから見える足が折れそうな程細い。

後ろ姿しか見えないのに、俺は不覚にもドキッとした。
背中だけなのに、儚く見えて…
ふわりと消えてなくなってしまいそうだった。

その日から、嫌々通ってた通学の為の歩道橋に、俺はその女の存在を確認する為に通った。
毎日、同じ時間同じ場所。
女は必ずそこに立ち、ボーッと眺めてた。

たぶん、1ヶ月以上は通ったと思う。

「…なぁ」

侑「…はい?」

「……ちょっと調べてほしいヤツ、居るんだ」

侑「はい。何処のチームです?」

「………女」

侑「え?…あ、はい。何処のチームの女ですか?」

「…」

侑「…え?…チカ、さん?」

「絶対ぇ、誰にも言わねぇ?」

侑「あ、えぇ、もちろん。それは」

俺は侑に歩道橋で見掛けてる女の話をした。
本当はショウでも良かったんだ。
だけど、何だか無性に恥ずかしかった。
今まで女の話なんかした事ねぇし。
況してや女なんかヤれりゃいいって、ショウもそう思ってるから。
何を話してもどんな内容でも、ショウが嗤う事なんか絶対ぇねぇんだけど。

気恥ずかしさから、俺は侑に頼んだ。

《○△高等学園 2年 増山 知恵》

侑からの情報を手に入れた俺は、それからもその女を探して通ってた。

何とか声を掛ける切っ掛けがほしい。

そう思いながらもただ毎日通う日々。
同時に、俺はヤる為の女を全て切った。

肩に、墨を入れたのはその頃。

蓮の花の上に読めねぇ様な書体で"知恵"と入れた。

ストーカーって言われても仕方ねぇ様な俺の行動。
侑も声掛けろって言ってた。

俺は、簡単にそれが出来なかった。

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