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第3章 一歩前進


父親が、本当の親じゃないって知ったのは、チカに会う少し前。
高校の何かの書類を、あたしは職員室で偶然見てしまった。

昌也「……知ってたのか」

「別にいい。気にしてないから。…母さんの事は…申し訳ないって思うけど。だからって、今更どうしろっての?…帰って何か変わるの?…これまでの時間が戻って来る訳じゃあるまいし」

昌也「……お袋に、一度でいいから、顔見せてやってくれ…頼む。毎晩泣いてんだ。お前が心配だって」

『今日はとりあえずこのまま帰る。また来るから』って言って、兄貴は車で走り去った。

翔「まさか…チエちゃんが、昌也さんの妹だったとは、ねぇ…」

潤紀「焦ったぁ…」

智翔「…大丈夫か?」

「……何で…チカ、兄貴の事…」

智翔「…ハァ…昌也さん…ここのチームの頭だった」

は?
兄貴、が?
嘘だ…
だって、兄貴…
いつも毎日家に居た…
学校から帰ってきて、出掛ける事なんかなかったのに…

翔「…チカの前の代の頭だったんだ。…昌也さんはいつも、夜中に出てきててさ。…だから走りもいつも深夜だったんだ」

智翔「お前が知らねぇって事は、寝静まるの待ってたんだろ?」

信じ、られない…
真面目だけが取り柄の、兄貴が…


マンションに帰っても、あたしは眠れなかった。
チカは気付いてたみたいだけど、抱き締めたまま何も言わずに居てくれて。

朝。

智翔「…チエ?」

「…ん?」

智翔「……一回、お袋さんに会って来い」

「…え?何、で?」

智翔「心配すんな。別に追い出す訳じゃねぇし、連絡くれたら迎えに行くよ」

「…嫌だ。絶対…兄貴、あたしを二度と家から出さなくなる」

智翔「…」

「昨夜はあんな言い方してたけど。…兄貴…あたしの事、離さないつもりだから」

智翔「…何で?」

「兄貴………父さんの子、だから」

智翔「…」

「血…繋がってないの。兄貴と」

昔…
あたしがまだ小さい頃。
兄貴に一度だけ悪戯された事がある。

父さんが実父じゃないって知ったのと同時に、兄貴が父さんの子だって事も、知った。

「……だから、帰んない」

智翔「…お袋さん知ってんのか?」

「…言ってない。…小学生になったばっかで、もうこれ以上口聞いてもらえなくなるの、嫌だったから」

智翔「…」

「ごめん…黙ってて」

智翔「いや」

「面倒な、女で…ごめん、ね?」

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