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第15章 【番外編】最後の約束


父さんが、涙を溢す事は一度もなかった。

全てが終わってお骨になってしまった母さんの前で、父さんはずっと小さな声で何か話してたと思う。

サエが父さんの傍に行こうとしたのを止めたのは、チハル。
『父さんと母さんの邪魔しちゃ駄目だ』って。


母さんの遺影を選んだのは父さんで。

ショウさんとアルバムを見て探してた時、父さんが『フッ(笑)』と小さく小さく笑った。
ショウさんが『…良い笑顔だな(笑)』って呟いたその目は真っ赤だった。

額の中の母さんは凄い笑顔。

元の写真は父さんが頬にキスしてる物。
葬儀社の人に『あんまり笑顔の写真はちょっと…』って言われたのを、ショウさんが絶対にこれが良いって喪主が言ってるんだからって説得してた。


それから父さんは、本当に別人の様で。

笑う事はおろか、話も殆んどしなくなった。
正に脱け殻…
そんな感じだったから、俺たちは毎日誰かしらが顔を見せてた。

家に行けば必ず仏壇の前に座ってた。

母さんが亡くなった翌年、父さんが亡くなった。
まるで一人が耐えられなくなったみたいに見えて…
それでも一年間、ずっと一人で生きてた父さんは、ちょうど母さんが亡くなった日に、母さんの仏壇の前で…
母さんの写真を抱き締めて死んでいた。

俺が家に行った時に、見つけたんだけど。

あんまりにも穏やかな顔してたから…
俺は暫くの間、父さんの傍に座り『…お疲れ様…一人で、頑張ったね?父さん』って。
背中を撫でてたっけ。

アヤたちに電話したのは、見つけてから一時間以上経ってから。
ショウさんにも電話したんだけど、本当に直ぐに飛んできてくれて…
父さんの姿を見て笑ってた。
『…何処までも…チエちゃんかよ(笑)』って。

父さんの遺影を、母さんと二人並んで笑ってる写真にした。
母さん一人のは、壁から外し仏壇の傍に置いた。

父さんが亡くなった時。

俺たちは誰も泣く事がなくて。
アヤも。
チハルもサエも。
声を揃えて、『良かったね?母さん』って。
『父さん、やっと母さんと一緒だね♪』って、笑った。

何があっても…
どんな時も…

いつも必ず一緒だった。

いくつになっても、手を繋ぎ。
子供たちの前だろうと、キスをする。
子供の誰かが母さんと話し込めば、大人気なく拗ねたりして。
ヤキモチ妬いて不貞腐れると、甘くて歯の浮く様な愛の言葉を母さんに囁いてた。

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