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第9章 平穏な日々を…


「…チエ。俺は、もう必要ねぇか?」

知恵「そんな訳ないっ」

「そうか?…本当のお前が、見えないよ。たくさん笑って、たくさん泣いてた…何処行った?……なぁ。必要ねぇから、泣かないんだろ?」

知恵「そうじゃないってばっ!」

「だったら泣けよっ!泣いて叫べよっ!……何で、我慢なんかすんだよ…お前の、ここが…壊れちまう前に、泣いてくれよ…」

知恵「…チ、カ…」

俺の方が、泣いてた。
バイトを辞めてから、笑ってたくさん他愛ない話ばっかしてた。
本当は辞めたくなかった筈なのに…
お袋さんが死んでからの知恵は泣く事をしない。
会った事もない婆ちゃんの時でさえ、あんなに泣いてたチエが。

「悪い…」

知恵「ううん。…ねぇ、チカ」

「…ん」

知恵「あたしね?…警察から電話来てさ…母さん死んだって聞いて、ね?」

「ん」

知恵「あたし、直ぐ思ったの。…やっと解放される、って。良かったって、思っちゃった…最低だよね?…自分の母親が死んだのに、さ…やっと自由になれるって…酷い娘だって、思った。でもさ、それ以上に、酷い事、されたんだから、仕方ないじゃないって…そう思われる様な、母親だったじゃないって…」

「…ん」

知恵「…最低、なの…あたし…酷い、娘、なんだ……そんな、事、ずっと…ぐるぐる、考えてた……こんな、最低、な女、なの……チカ…だか、ら…ごめん、ね?…親が死んだのに、良かったなんて…思う様、な…嫌、だよね…」

「…チエ」

知恵「でもあたしっ!…あたし……チカ、が…居ない、と…生きて、けない、から…だか、ら…最低、な、娘だか、ら…泣いちゃ、駄目、だって……泣いたら、また、チカ…困っちゃ、から……ねぇ…チ、カァ…一人に、しない、で…お願い、だからぁ……も、泣かな、いから…ごめん、なさい…チ、カ…」

話しながら少しずつチエの顔が歪んでく。
それでも必死で堪えるチエ。
全ては、俺に見捨てられない為。
泣いてばっかで呆れられない為だった。

最低?
んな事思ってねぇ。
それだけの事をされてきたって俺は知ってるから。

何度も俺を呼び、『お願いだから』と。
『一人にしないで』と。

やっと、その頬に涙の筋を見た。

手を伸ばし、後頭部に手を添え引き寄せた。

知恵「チ、カァ…ック…泣いちゃ、て…ごめん、なさい…チカ…ごめん、ね?…も、泣かない、から…許し、て?」

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