
その男、溺愛注意報。
第3章 彼女
「もう、いいよ」
ーグイッ
強く那美を引き寄せて、
自分の胸に閉じ込めた。
苦しそうな那美を見ると
俺まで、苦しいーー…
浮気なんて、
俺がこの世で一番
嫌いなモノなのに
那美のソレは
俺が軽蔑するソレとは
違う気がして。
「ひ、びき…、先輩っ」
俺の名前を呼ぶ那美の
か細い声に、心が震えた。
暗闇の中、
車のライトだけが
俺たちを照らす。
「動揺して……こんなこと響先輩にペラペラ話しちゃうくらい、わたし…余裕ないんです」
他人を簡単にテリトリーに
入れない彼女の、
強さの中にある
弱さを
垣間見た気がした。
強いよう見えるそれは
ただの強がりに過ぎない。
隙が無いように見えて
危なっかしい。
