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方位磁石の指す方向。

第5章 scene 5






「じゃあ翔さん、
俺帰ります。」


いつもより早く着替えた潤が
俺より先に部室を出た。

俺は今日鍵当番で
これから職員室に寄らなくちゃ
いけなくて。





「…失礼しました。」


用事が済んだから、
もう帰れる。

…二宮にもちゃんと
言わなくちゃ。



俯いて歩いてたら、
声をかけられた。



「翔さんっ」


聞き慣れた俺の大切な人の声だった。


…俺の、大切な人。


「…二宮、……ごめん…」

「えっ、急に!?」


びっくりしたような顔をしてから
微笑む二宮。


「…ごめん。」

「いや、全然だいじょぶですよ。
…疲れてたんですよね?

部活、忙しかったし…」



そうなんでしょ?って
俺を見つめる瞳。

…違う。


暇さえあれば二宮からきた
メールを見返してた。

タイミングがわからなかった。


「…二宮、あのさ、」


二宮を引き寄せて、
耳元で囁いた。


「…っ、それ、」

「…優勝したら、ね。」

「……はぃ、」


顔を真っ赤にさせて
小さくなってしまった二宮。


…優勝したら、な。

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