
方位磁石の指す方向。
第5章 scene 5
…あ。
空が曇ってきた。
翔さんたち、
大丈夫かな…?
「…あ、」
ぽつほつ…と小さな音を
立て始めたと思ったら、
ざあざあと大きな音を
立てて落ちる大きめのの雨粒。
…あちゃー。
翔さんびしょ濡れだ。
…うん。
ちょっと嫉妬する。
髪の毛が濡れてる翔さん。
それから、きっと運動着が
透けてるんだろうな…
そんな姿、他の人に
見せたくないんだって。
「二宮、お前はまた──…」
「すっすいません!!」
…俺、ほんと翔さんのことが
好きなんだろうな…
なんでこんなにも
翔さんが好きなんだろ。
よくわかんないや。
「…ねぇ、和」
「わわわっ」
「お前なんか顔赤くね?」
「えっ、そんなこと…」
「つーか、明日大会なんだけど
お前来れるー?」
「っえ、そうなの!?」
…サッカーの試合?
うそ、
そんなこと、一言も…
「あれ?翔さんから聞いてないんだ?
明日、大会だよ?」
「うそ…
そんなこと、聞いてなかったよ…」
「……ふぅん。
てか、来れる?」
「…うん、行けたら行く」
…行けたら行く。
なんて曖昧なんだろう。
さっきまで幸せだったのに、
翔さんに隠し事をさせられてるだけで
胸がざわつく…。
「やっぱり、行けたら行くじゃなくて
絶対に行くからね!!」
「お、おう…」
…絶対翔さんを問い詰める。
今日。
