テキストサイズ

方位磁石の指す方向。

第5章 scene 5

二宮side



急に心配になったんだ。


いつかは翔さんも、
…離れていくんじゃないかって


俺の前から姿を
消してしまうんじゃないかって


そんなこと考えたら、
俺は男で翔さんも男で

捨てられる可能性なんて
いくらでもあるから…



でも翔さんは、
俺を愛してくれてる。

俺を大事に思ってくれてる。



…他の誰よりも、
俺を──…










「…みや、二宮!!」

「ふぁっ!?」


長かった文化祭も終わり、
ひと段落ついたこの頃。



「全くお前は…
どこを見てるんだ。

そんなに授業が
簡単か?

じゃあこれ解いてみろ!」


…うわー
なんだよこれ。


この時のAさんの気持ちを
答えなさいとか…

そんなん無理だろ。


…てゆか、ぼけっとしてたわけ
じゃなくて、校庭にいる翔さんを
目で追ってただけ。



「…こう、ですか…?」

「ああ…やればできるじゃないか。」


満足そうな顔した先生。

…俺はまた、席に戻り
翔さんを目で追うんだ。




…こんなことしかできないから。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ