
方位磁石の指す方向。
第3章 scene 3
智くんの言葉なんか引っ掛かって、
授業に集中できなかった。
でも、黙々とノートを取り続けている
雅紀を見たら、
「ちゃんとやんなきゃな。」
なんて思ったり。
だけど、隣で気持ち良さそうに寝ている
智くんを見てたら、
「さっきの言葉の意味、
知りたいな。」
とか。
思うことはたくさんあって、
授業どころじゃなかった。
「……雅紀、後でノート見せてくんね?」
「えっ!?翔ちゃんノートとってないの!?
珍しいじゃん!どうしたの!?悩み!?」
「いや、そういうんじゃねえけど…
ぼーっとしててさ。」
……嘘は言ってない、ハズ。
ぐっと下唇を噛み、
雅紀を見つめた。
ふふって柔らかく笑い、
ノートを差し出した。
「俺、字汚いけど。
貸したげるよ。」
「さんきゅ!
購買でパン奢るな!」
「え!ほんと!?
ありがとう!翔ちゃんっ」
「俺にも奢ってぇ…」
智くんが机に突っ伏しながら
俺を見つめた。
きゅんっとしてしまったけど、
その気持ちを押さえて。
「また、今度ね。」
「今度って言うと絶対来ない!
いつ!」
「……じゃあ、水曜日ね。
部活早く終わるし。」
「やった」
ふにゃぁって崩れそうな笑顔が
俺の目の前にいまある。
…やっぱり、まだ、好き…なんだよね。
