
方位磁石の指す方向。
第15章 scene 14
久しぶりに見た翔さんは、
意外と元気そうで。
…なんだ。
具合悪くて返信して
なかったわけじゃないんだ。
ちょっと、不安だったんだよね。
浮気はないと思ったけど、
体調崩してるのかなとか。
「ひさしぶり、だね。」
「…おう。」
よそよそしいなぁ。
距離を縮めようと、
俺から近付けば。
「…っと、ごめん…」
間を、開けられた。
俺がムッとした顔付きになったのか、
翔さんは少し戸惑って。
「違う、違うよ。」
と、必死に弁解しようとしてきた。
「何が違うの。」
不満げな声をあげれば、
目を逸らして。
「…ごめん。」
「は?」
「連絡、してなくて、ごめん。」
いや、今俺が気にしてるのは
そっちじゃないんだけど。
まあ、いいや。
「ここ最近、忙しかったの?
大学さ。」
「あー、まあ、そんな感じ。」
「ふーん…」
「うっ、疑うなよ!?」
「別に疑ってなんてないけどさ、
なんかおかしいなーって。」
ぷいっと顔を逸らせば、
翔さんは焦って。
「ごめん、ホントのこと言うから。」
「…なに。」
ホントのことって、
なんか嫌な気がするんだけど。
