
方位磁石の指す方向。
第15章 scene 14
一週間後。
なんとか智から1000円と、
おばさんから1000円もらった。
智からは「あとで利子つけて返して」
って言われたけど…。
ガタンゴトン、ガタンゴトン。
揺られて揺られて、ようやく付いた。
この駅からちょっと歩けば
もうすぐ翔さんに会えるはず。
『会いに行くね』
そう連絡を入れたけれど、
既読もつかない。
でも、きっと。
きっと会えるから。
「…あ、ここかな…」
白を基調にしたマンション。
茶色い階段をのぼって、
206号室を探す。
…ここだ。
ごくり、と唾を飲み込んで
息を整える。
バカみたいに胸がうるさい。
…このドアを開ければ、
翔さんがいるんだ…。
「…よし。」と、意気込んでから
インターホンを鳴らす。
「…はーい、」
控えめに聞こえた声。
…そうだ、この声だ。
「…え?」
「やっと、会えたっ…」
好きが溢れて、
もう収拾がつかない。
