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方位磁石の指す方向。

第15章 scene 14



鼻の奥の方がツン、と痛んだ。

涙を堪えようとして
眩しすぎる空を見上げた。

好き、好きなんだ。

こんなにも俺は、翔さんが大切なんだ。





「……あった。」


机の奥にしまいこんでいた
翔さんの住む東京のアパートの住所。

くしゃくしゃの紙切れは、
もう字が読めないくらい滲んでいる。

大好きな、翔さんの字。
それだけで自然と頬が緩んだ。


「…片道、1200円…」


結構、痛いかも。

お財布を出してみるけど、
持ち合わせは2000円。

…あと、400円…。


ふう、と一つ溜め息。

夢に向かって東京で
頑張っている翔さんのことを、
邪魔したいわけじゃない。

むしろ、応援したい。
けど。

こんなにも連絡がこないのは、
やっぱりおかしいよ。


ねえ翔さん。

俺のことなんてもう
どうでもよくなっちゃったの?

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