
方位磁石の指す方向。
第8章 scene 7
いや、そもそもあれだ。
俺が勉強勉強って口実で
逃げてるからなのかもしれない。
正直…
面倒だと思うことだってあった。
だってそりゃ、
青春真っ盛りの高校生だし?
…恋人だからといって、
そこまで特別に
接することはできなかった。
大切にしたい。
その気持ちが強いから、
手なんか出せやしない。
例え、二宮が望んでいたって、
多分俺には無理だ。
『勉強が~』
『受験が~』
この一言ですべてから
逃げてしまうことが出来るんだから。
「…じゃあ櫻井、問二な~」
「(だっりぃなぁ…)」
なんで毎日このくそつまらない授業を
受けなければならないんだ。
昨日も同じようなことを
やったじゃないか。
生憎、俺は要領がいいから
一度したことは忘れない。
だからこんな…こんな無意味なこと、
する必要ないのに…。
二宮が頭を過ぎるせいで、
今日はなんだか頭が働かないみたいだ。
「…?なんだ櫻井、
今日調子悪いのか?」
何分立っても突っ立ったままの
俺を見兼ねて、
教担は俺に声をかけた。
「……みたいっすね。」
「…仕方ないなぁ。
じゃあ、席戻れ」
「うす」
こういうとき俺は、
いつも真面目に授業を受けていて
よかったと心から思う。
